【ほんのひとことVol.2】増村十七『バクちゃん』

【ほんのひとこと】では棚主の私が個人的に読んでおすすめしたい本についてさらっと感想をお伝えする読書感想文です。今回はその第2弾!

移民のバクちゃん

今回はおすすめのマンガを紹介します。私はこれまで少年○○系のマンガしか読んできませんでしたが(大好きだけど最近はアニメで見てしまう)、学生時代に難民支援などの活動を通じて移民・難民問題に関心を抱く中で、「このマンガめっちゃいいよ」といううわさを聞き、本屋さんですぐ購入したお気に入りの本です。

なぜこのような形で興味を持ったのかというと、帯にはこんな紹介が(版元ドットコムより引用)

「ねぇ? 日本は、東京は、どう見える?」

第21回文化庁メディア芸術祭【新人賞】を受賞した著者が贈る、
移民バクちゃんの「すこし不思議」で「すこしリアル」なダイバーシティ物語。
夢が枯れた故郷から地球へやってきたバクちゃん。
永住をめざし賢明に生きるバクちゃんの目にうつる東京は、わたしたち「みんな」の世界かも。

版元ドットコム(https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784047360815

私は日々難民支援の活動をする中で、全く文字も話している言語も見た目も考え方も異なる国に少ない持ち物で逃れられる国にとりあえず逃げてきたような方々と出会いました。英語が通じればよい方で、もちろん英語を母語とせず、我々多くの日本人のように第二言語としての英語を話さない人もたくさんおり、お互いの表情と少しだけわかる英語で言葉を紡ぐ(「会話」をするのってとても難しい)ような場面も多く出くわしました。

このマンガの世界観はまさに少しファンタジーだけどリアル。この描き方も「実はリアルなのに見えないようにされてしまっている人々がいる」という現実を描いているようでそこが増村さん上手いなあと一度読み通したただけで感動してしまいました。

他の惑星からやってきた移民バクちゃんの目線を通して描かれる「地球」。ビザを取ることとは、異国の地で働くこととは、異国の地で「つながる」こととは。考えさせられる作品です。

〆くくり

現在バクちゃんは2巻で完結している作品です。少年マンガのような膨大な巻数ではないのでそこが色んな作品を読みたいBooksをちこち店主にはありがたい(笑)

PASSAGEでは店頭・オンラインにてバクちゃん1巻を販売中!ぜひ試しに読んでみては?

そして増村十七さんの新作「花四段といっしょ」が2巻が出版されたのでこれを機に読んでみては?

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【ほんのひとことVol.1】安達茉莉子『私の生活改善運動』

安達茉莉子「私の生活改善運動」(三輪舎)

BOOKSをちこちのブログ記念すべき第一弾!

【ほんのひとこと】では棚主の私が個人的に読んでおすすめしたい本についてさらっと感想をお伝えする読書感想文です。だらだらと文章を書いてしまいがちなので自分を諫めるためにも「ほんの一言だけだよ~」という意味での【ほんのひとこと】、そして一日に200点も出版されている本たちの中から「本にもひとこと言わせてよ!」という数ある本たちの声を吸い上げる企画としてこのブログを立ち上げました。

飽き性な私ですが、実は本を読んだ後必ずB6のノート1ページにそのとき読んだ感想や日々の考え事を落とし込んでいます。過去に読んだ「これはいい!」という本もご紹介できればと思いますのでぜひご覧ください!

今回は安達茉莉子さんの『私の生活改善運動』(三輪舎)を取り上げさせていただきます。

「生活改善運動」という言葉

をちこち店主は仕事に疲れると、帰り道にある池袋にあるジュンク堂でぶらついていることが多い。


自分の背丈の1.5倍ほどの本棚の間に一人でいる感覚。森の中で虫のさざめきを聞きながら、風が吹き、木々がさーっと枝葉をなびかせる。1階を一通り見た後、上の階でぼーっと本を眺めるのが好きだ。

頭の中では今日対応したクレームを反芻しながら、世の中には狂ったやつもいるもんだなあとふふっと笑い、私の頭のメモリーをこれ以上占拠させないために「ごみ箱」に移動させる。そして友達やパートナーに愚痴を聞いてもらうことで、完全に削除する。そんなやつらにプライベートを邪魔されてたまるもんか。

仕事に疲れ切っている、いや、あきれきっているのには理由がある。
私を含め、社員全員たんたんと仕事をこなし、サボってなどいないのにコロナ禍で人員を減らしすぎた会社は通常の業務を回すことができなくなり、その結果対応しきれないことを社員の「がんばり不足」と決めつけ、毎朝の朝礼で「昨日は電話が取り切れずお客様にご迷惑をおかけしているので皆さん今日は常にとれる態勢でがんばって対応しきりましょうね!」とボーナスもくれない会社からカツを入れられる。誰もが知る大きな会社で働いていて、人ウケだけはいいのだが、中で働いている人の多くはこんな状況に飽き飽きしながらも日々の生活、あるいは家族を守るために働いている。中には忙しい日々の中で苦しみながらも家族の生活を守るために転職していく仲間や先輩たちもいる。この会社のいいところは転職で旅立つ人たちを誰ひとりとして意地悪することなく、「おめでとう!」という感じで送り出しているところだ。みんうらやましいのだろう。もちろん私も心から祝福の気持ちを伝え、新しい明るい未来を応援する。一方で自分はなにしてんだろうというもやもやとした気持ちを毎度抱きながらも、新卒で入社した会社だしもう少し居てみようと思い、日々クレーマーたちと戦っている。

その時に見つけたのがこの本。

コロナ禍で職場を失ったことをきっかけに10年以上住んでいたマンションを出、居候を経て、横浜・妙蓮寺で新しい生活を作り始めた筆者。もともと住むところにこだわりがなかったが、知人の「生活改善運動」という言葉に出会い、それが永久に変わってしまったという。

安達さんがこの言葉を用いるのは歴史上に実際にあった「生活改善運動」というわけではなく、「自分にとっての心地よさ、快・不快を判別し、より幸福なほうへ向けて生活の諸側面を改善していく自主的で内発的な運動」(10ページより引用)と定義している。

この定義をジュンク堂で立ち読みしたところ、無意識のうちに手の中に収めて次の棚に向かっていた。続きは心休まる自宅で、という思いが強くあった。何よりもある種日々「あきらめ」のような形で仕事に向かい、日々の生活は土日と長い連休だけ大事にするというのがとても馬鹿みたいに思えてきて、抜本的にすべてを変えることは不可能だろうということは感じていたので「私も生活改善運動」しようと思い、手に取った。

本の中では器や服を買うとき、料理をするときのエピソードなど生活のあらゆる面での安達さんの発見を教えてくれるが、どのエピソードを聞いても、自分で自分を3m上空から見たとして、自分の生活は自分のものなのになんて気を遣われていないのだろうと、自分の生活に哀れに思えてしまった。悪く言うわけではないが、こんな服が足りない!となったときに近くのモールへチャリを飛ばし、無意識にUNI〇LOや〇印用品に行き、これでいいやと手あたり次第のものを手にして、お昼は近くにあるし、マクド〇ルドのCMでやってたあれ食べるかという生活がしょうもなく思えてしまった。どうせお金を使うのであれば「とりあえず」ではなく、「これにしたい」を大事にしたいと思えるようになった。まあUNI〇LOや〇印用品で何かを買うにしても選び取ってはいるのだが、その前提としてその店を「とりあえず」で選び取ってしまっているので、意志を持った選択から生活改善をしていきたいと感じた。

あくまでも筆者の安達さんが言うようにをちこち店主の中での「より幸福なほうへ向けて生活の諸側面を改善していく自主的で内発的な運動」である。みなさんの中ではまた違った運動が行われるであろう。

〆くくり

 一度入荷した「私の生活改善運動」ですが、一瞬で売れてしまいました。時期を見ながらまた入荷できたらと思いますのでぜひお手に取ってみてください。

BOOKSをちこちのブログ記念すべき第一弾ここまで読んでいただきありがとうございました!

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ほんのひとこと

【ほんのひとこと】では棚主の私が個人的に読んでおすすめしたい本についてさらっと感想をお伝えしていく読書感想文のようなものにしたいと思っています。なぜこのようなネーミングにしたのかというと、だらだらと文章を書いてしまいがちなので自分を諫めるためにも「ほんの一言だけだよ~」という意味での【ほんのひとこと】、そして一日に200点も出版されている本たちの中から「本にもひとこと言わせてよ!」という数ある本たちの声を吸い上げる企画としてこのブログを立ち上げました。

飽き性な私ですが、実は本を読んだ後必ずB6のノート1ページにそのとき読んだ感想や日々の考え事を落とし込んでいます。過去に読んだ「これはいい!」という本もご紹介できればと思いますのでぜひご覧ください!

ここでご紹介した本はもしかしたら棚にも並ぶかも!?しれませんのでぜひお楽しみに!

はじめまして!

3月にBOOKSをちこちを開店してはや半年が経ち、これまで搬入した本が多くの方に気に入ってもらえ、お迎えいただくことができました。

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